夏の終わり

週初の雨がなかなかやまず、今週はずっとグズグズだった。天気図を見ると、日本列島に長い前線がかかっている。秋雨前線だ。今日はまた台風が熱波を運んできたが、気分はすっかり秋である。
▼夏と共に甲子園も終わった。逆か。甲子園と共に夏も終わった。今年も有力校や隣県同士が早々につぶし合うクジ運のイタズラがあったが、決勝は実力通り東西の横綱対決となった。打ってよし投げてよしの両チームだが、ここまで左右二枚看板で勝ち抜き、余力を残したエースが満を持して先発した東海大相模が記念すべき100回大会を制した。
▼一人二人のスター選手やラッキーボーイならベスト4の旋風止まり。優勝を狙うには、強力打線に超高校級投手を擁してもまだ足りない。同等の力を持つ控え投手との継投またはローテで回し、決勝までエースの体力を温存できないとキツイ。毎年全国各地から百人を超える部員を選抜する有力校でも、それだけの戦力を整えるのは難しい。まさに優勝はワンチャンス。仙台育英の無念は察するに余りある。
▼さて、100回大会を面白くした注目度ナンバーワン選手は、なんといっても怪物清宮ジュニアだろう。怪物はジュニアではなく清宮にかかる。清宮克幸といえば、僕と同世代の早大蹴球部創立以来のナンバーワンNo8(語彙矛盾か)。現役引退後は監督として母校に黄金期をもたらし、トップリーグの監督に転じても就任したチームをことごとく優勝に導くミスターリーダーシップその人である。
▼新国立競技場問題でミソのついた感のあるラグビーだが、件の森元首相や恐喝騒ぎの大八木のような悪役キャラばかりではない。先日、清宮同様低迷する母校を日本一に導いた元慶應蹴球部監督の上田昭夫氏が亡くなった。宿沢、石塚、そしてこの上田と、現役時代SHやフランカーで活躍した小兵には早逝が目立つ。やはり無理がたたるのだろうか。
▼宿沢は三井住友銀行の取締役専務執行役員。上田はフジテレビのキャスター。リーダーシップの代名詞清宮が兄のように慕ったのが、イラクで殉職した早大蹴球部の先輩、外交官奥克彦である。並外れた英知に屈強な身体を併せ持ち、文武両道に秀でた彼らも生身の人間である。早死するのは善人ばかりなり。
▼17日の夜に下の子が夏合宿から戻り、翌日には帰省していた妻が実家から戻り、我が家に日常生活が戻ってきた。夜勤や会合でなかなか妻の手料理にありつけないが、お昼の弁当が復活して何を食べるか悩まなくてもすむだけでもありがたい。例年妻の里帰りに特に条件はつけないが、今年は挨拶がてら僕の実家にも寄って様子を見てきてくれるようたのんでおいた。「お義母さんがすごく年をとってた」そうだ。心配ではあるが、どうしようもない。
▼下の子の合宿は長野県の霧ヶ峰。その名の通り、霧がすごくてとても寒かったそうだ。彼がそんな濃霧を経験するのは、おそらく生まれて初めてのことだろう。先日のケンミンショーの特集は「海なし県あるある」だったが、逆に高原のことは海人の我々にはわからないことの方が多い。
▼合宿には全国屈指の名門が集まる。下の子が「山梨学院の人が猛スピードで藪の中に突っ込んでいった」と目を丸くして話している。たぶんクロカンのコースのことだろう。「高校入ったら速い人ばっかりだと思ったら、もっと速い人がいっぱいいた」世界は広い。世の中上には上がいる。腐らず、天狗にならず、素直な心でついていってほしい。

▼合宿明けのオフに映画「日本の一番長い日」を観に行った下の子は「さっぱり意味がわからんかった。客がおじいさんばっかりやった」と言っていた。早実の清宮と同い年の彼は今、毎日が驚きの連続だろう。見るもの聞くものめずらしいことばかりだ。ものみな輝いて見えるに違いない。そう見えなくなった時、夏が終わる。


妻が帰ってきた日は夜勤。水曜はトマトグラタンに友人が送ってくれたジャガバター。木曜ヨガカレー。金曜会合で写真なし。今日は連続の会合だったがキャンセルしてウチゴハンナポリタン。