発達形成の諸段階

今週は秋晴れの日が多かったが、週末になって俄かに雲行きが怪しくなってきた。大崩れしないはずが、実際には土砂降りである。天気予報もどうかならんかな。
▼今週は水曜からの四日だけの勤務だったのに随分長く感じた。遊び癖がついたのかな。僕は本質的に自分に甘いナマケモノだ。だがマイナスファクターも常に自覚的であることでコントロール可能かもしれない。一種の持病のようなものである。敵を知り己を知れば百戦危うからずというが、己だけでも知っていれば、なんとか生きてはゆけるだろう。
▼TPP大筋合意、安倍改造内閣ノーベル賞と、めまぐるしく移り変わる世の中の動きに全くついていけない。元々自分には関係ない話といえばそれまでだが、近年取り残された感が強くなる一方だ。やはり安保法制の成立は決定的な出来事だった。事の是非は問題ではない。我々パンピーはただひたすら決定事項のプレスリリースを聞かされるだけの存在なのだ。
▼サッカーW杯アジア予選は難敵シリアに快勝して喜んでいるが、イラク戦と同じく勝って当り前。彼らの祖国は今、二人に一人が家をなくし、三人に一人が難民状態にある。アサド、反政府組織、イスラム国の三つ巴に米露が介入する泥沼の内戦で、サッカーどころの話ではないのである。
▼対するラグビーW杯は、最終戦を待たずに予選敗退が決まったが、そのことで次戦の興味が減じることがいささかもない非常にレアなケースだ。消化試合を作らないのも選手のパフォーマンス次第である。今や海外組がほとんどのサッカー代表ではあるが、実力が追いついていないのは明らかだ。個人主義も結構だが、ファンを感動させるプレーを見せるのが先だろう。
▼さて、いつぞや尊敬する超人気ブロガー女史が、ノーベル賞は成果に与えられるのではなく期待値に与えられるものだというようなことを書いていた気がするが、今年のノーベル医学生理学賞の大村さんは、まさにその典型だと思う。けして最先端の研究というわけではない。黄熱病の野口英世以来細菌学の伝統ある北里大学で、風土病の特効薬により何億ものアフリカ人を救った。
▼折しもTPP交渉で新薬開発のデータ保護期間をめぐり、大手製薬会社の意向を汲む米国と途上国の対立が表面化した矢先のこと。医学の本来の役割が金儲けにあるのではないこと、先進国の難病の金持ちもアフリカの何億もの疫病患者も命の重さは等しいことを気づかせる素晴らしい決定だった。にしても米国は自由貿易を唱えて他国の関税には撤廃圧力をかけながら、自国産業は保護する相変わらずの横暴ぶり。紛糾した交渉過程を見れば、今や我儘放題の米国の言いなりなのは世界中で日本だけなのがよくわかる。
▼木曜は社長の代わりにとある政治家の会合に出席。以前新幹線の中で偶然握手した時はまだ県議だったのに、いつの間にか国会議員になっていて驚いた。僕より随分若い。地元のグローバル企業に3年勤めた後、市議二期、県議二期、そして国会議員も二期目だという。目標をもって人生を歩かなければ絶対にできない順調すぎるキャリアである。
▼来賓挨拶、ゲストの講演、本人の国政報告の後、質問の時間がとられた。例によって安保法制に批判的な意見が出たが、無難に対応していた。「国際化社会の中で世界で活躍する日本人は意外に多い。彼らの生命を守るために現行憲法下でできるギリギリの範囲を議論した結果」と言われれば納得するしかない。じゃあアベチャンも最初からそう言えばよかったのに。言ってたって?おかしいなあ。何かのバイアスがかかって目も耳も曇っていたのかしらん。
▼金曜のドキュメント72hは、先頃建て替えのため閉館したホテルオークラの最後の三日間。オークラを愛してやまない外国人ゲイ夫婦、ガンで声を失った93歳の会社経営者、父親が愛したバーに立ち寄る着物姿の母娘、日光東照宮に請われて書を納めにゆく途上の書家夫婦、四度目の結婚で68にして跡継ぎを得た78歳のダンディな洋装屋…。老舗ホテルに相応しい艶のある多彩な顔触れだ。世の中にはコスパとは別の法則が支配する空間がある。新幹線パックのホテルで得したと喜んでるようじゃまだまだだ。

金曜は隨園別館で食べた鶏とシイタケのうま煮がおいしかったので再現。

土曜はいつもの韓国料理屋で鶏カルビと海鮮チヂミ。