愛情の裏返し

土、日と雨が降った後、一日おいて再び雨また雨。義父の葬儀からこちら、ほとんど雨である。
▼傾斜マンション問題は完全にデータ偽装問題にすり替えられた。19日までに業界団体に調査報告を求めた国交相は、「工事さえしっかりしていれば書類はないがしろにしてもいいという風潮があるとすれば是正する必要がある」とのたまった。バカも休み休みにしてほしい。第一に流用してでもデータをそろえるのは書類がないがしろにできないからだ。これは実質より体裁を重んじる日本の書類文化の弊害である。第二に建設業において、あるゆる権力が集中するゼネコン以外に何を言っても無意味である。裁量権のない専門業者に何かを勧告すること自体お門違いだ。
▼沖縄基地移設問題では、県と国が泥沼の訴訟合戦に突入した。またも国交相はバカの一つ覚えで「普天間の危険除去」を力説していたが、そんなものは現地の人が求めるもので端の人がいうことじゃない。翁知事に言わせれば「老朽化した施設を新型施設に乗り換える口実」にすぎない。この件に関して沖縄がわからずやだと感じる人は、やはり何かに洗脳されているのだと思う。沖縄の海兵隊は日本を守るために駐留しているわけではない。米国が自国の防衛戦略の拠点として占領地を利用しているだけだ。政府が一言真実を語りさえすれば、つまり「我々は米国の意思に逆らえないのだ」と言って頭を下げれば僕らも納得する。
▼仕事がなかなかうまくいかない中、昨日は友人と電話で長話して気分転換になった。一人は年下の友人。僕のような人間に定期的に連絡をくれ、自身の家庭や職場のトラブルを相談してくれるのは彼だけである。茫洋とした風采で悩みとは無縁そうな彼にも、いろいろ問題はあるようだ。生きていれば何かしら問題はある。しかしそのほとんどは人間関係によるものだ。
▼二人目は高校からの親友。ラグビー部出身の彼と、日本が大活躍したWCの話で盛り上がった。山田、五郎丸の二人の才能が、年齢的にピークの前回大会に出場していないことを、彼もまた惜しんでいた。何事も人事で大勢は決まる。我々は代表には常に最高の選手が選ばれているものと信じて疑わないが、選ぶ側の目が曇っていては勝ち目はない。あらゆる分野で、日本はそこのところにメスを入れる時期にきている。
▼お忍びで映画「さよなら人類」を観る。正直よくわからない映画だった。北欧映画のようだ。とにかく殺風景で、いくら福祉国家でもこんな国に暮らしたら早晩おかしくなりそうだ。

おもしろグッズを売る二人の友人が主役。コンビの一方の要領が悪くてグッズは全く売れない。しかしそのマヌケが見る夢は、国王のロシア討伐行軍や異教徒を焼く釜など、人類の愚行中の愚行を集めたような悪夢だ。どっちがマトモかマヌケかはともかく、商売に誘った方は出来損ないを罵って別れるが、結局は元のさやに納まる。
▼合宿も長期にわたり、外食の選択肢も狭まる中、ついに毎年最後の晩餐の禁を破り、近所のとんかつの名店の暖簾をくぐる。相変わらず女将の愛想が超悪い。きっと病気のリハビリかなんかだと思う。商売上は彼女が店に立っていいことはひとつもない。ただとんかつの味は絶品。二組のJリーガーが彼女を連れてきていた。



上から上の子がトンテキ、下の子がロースかつ、僕がポークカツレツ。
▼実家に残っている妻からメール。お義母さんのお義父さんへの愚痴がとまらないらしい。ケンカするほど仲がいい。可愛さ余って憎さ百倍。言葉に尽くせぬ歳月を共に歩んだ仲である。アリストファネスによれば、人間は元は手が四本、足が四本の雌雄同体だったところをゼウスに両断された。それで元の半身を永遠に求めるのだと。その相手がもうこの世にいないとなれば悪態のひとつも言いたくなるってもんだ。