末法の世

真冬とは思えぬ陽気である。普通冬の晴れ間は風が強くて寒いが、これもエルニーニョの影響だろうか。しばらく季節外れの暖かい日が続きそうだ。
▼12月最初の週末をなんとか切り抜けた。工事は今週末、来週末がピークで、そのまま連休工事に突入する。つまりずっとピーク。今年は例年になく工事量が多く、既に帰省は大晦日の最終パターンが確定。年明けも4日から始動。年度末まで針が振り切れたまま戻りそうもない。
▼工事量が多いと当然その分目が届かなくなる。あちこちに綻びが生じる。そこでどう対処するか。社員がいる現場は最初から捨ててかかる。彼らに任せて余計な口を挟まない。そしてこれが一番大事なことだが、何か事があったときに慌てない。彼らに責任を負わせない。全ては自分の段どりが悪いせいだと思いきる。わかってはいてもこれがなかなかできない。人間の器量が問われる。
▼傾斜マンション問題は、いよいよ三井住友建設の瑕疵がはっきりしてきた。傾いたマンションの場所に元々建っていた建物の杭は18メートルだったそうだ。一方、三井住友建設がそのことを知った上で新しいマンションのために設計した杭の長さは14メートル。その上で、以前より杭を短く設定したのは、地盤調査を元に判断したもので問題はなく、あくまで施工段階で長さが足りなければ打ち足す責任が施工業者側にあると主張している。
▼発覚当初の日曜討論で、石井国交大臣がこれと同じことをしゃべっていたが、国交省とゼネコン以外の人間で、誰かこの文章を読んで納得できるという人がいたらお目にかかりたい。無理が通れば道理が引っ込む。こんな理屈が通るなら、そもそも設計も管理も何の意味もないことになる。
▼実際に、設計図や監督の指示は全て目安にすぎず、最終の判断は常に現場作業員が行うというようなことがあるのだろうか。事実はその逆だ。設計図や監督の指示を無視して作業員が勝手な判断をすることなどありえない。その上で法的には、ゼネコンに指導義務はあっても、責任は施工業者にあることになっているとすれば、それは法律が間違っている。法治国家といってもこの程度だ。
▼今回の事件で、三井住友建設から杭工事を直接受注した一次請けの日立ハイテクノロジーズはIT企業である。それがなぜこんなところに名を連ねているのか。まさかニュースで報じられている「主に進捗管理を担当」という解説を鵜呑みにするバカはいまい。単にペーパーマージンを得て二次以下に丸投げし、実際の工事には一切関わっていないことは明白だ。
▼どうしてそんなことが可能なのか。それは三井住友建設が日立関連のなんらんかの工事を受注するバーターか、まだ成立していないとしても少なくとも受注しようとしているからである。世の中は全てギブアンドテイクだ。その関係の蚊帳の外にいる人たちが、工期に追われ、泥にまみれ、最低限の日銭をあてがわれ、彼らの金儲けのお先棒を担がされているわけだ。アホクサ。もういい加減やめたい。
▼昨日は上の子の就職祝いに家族で会社の接待に利用する焼肉屋に。厚さ1センチのタンに下の子は「これタンじゃない。ステーキや」

巨大なシイタケに「これシイタケじゃない。肉だ」

と大喜び。キノコが苦手な上の子もペロリ。よくきくと、刑務官も教職と同じ任地採用らしく、まだ教職免許をとった段階。明日がその採用面接だという。お祝いが少し早すぎた。でも千人超えは受験者数ではなく合格者で、席次がいいから大丈夫だろうという。なおのこともったいない(親バカ)。
▼日曜は妻が僕のことが好きなのでわざわざ現場までやってきていっしょにランチ。日本人がやっている評判の中華。とてもおいしかった。

夜実家に電話。義父の葬儀以来だ。昨年から温泉宿で越年するようになった両親から、子どもたちもどうだろうと提案を受けていたが、一泊二泊ならともかく晦日から三が日の長逗留は無理がある。八十前の両親と十代の子どもたちでは時間感覚が違う。「雑魚寝でもいいじゃないか」という言葉に、ふとこちらに越してくる際の荷造りの間、子どもたちを実家に預けたことを思い出した。できることならもう一度…。

今日は昨日肉をたらふく食べた反動で妻が刺身を買ってきた。
お義母さんは小康状態。