2016年正月回顧

短い正月休みも終わり、4日から早くも始動である。お正月からこちら好天に恵まれ、春のような陽気である。昨年は世界的に受難の一年だったが、今年はこの天気のように穏やかな年であってほしい。さて、いつものように正月休みを駆け足で振り返っておこう。
▼妻の実家の元旦は牡蠣を使ったお雑煮から始まる。

今年は全国的に牡蠣が不作で心配したが、例年通り大ぶりのものが広島のお義母さんの妹から大量に送られてきた。ただし三家族に送ると破産するような値段らしい。昨年から僕の両親が年末年始を温泉宿で過ごすようになったので、移動することなく引き続きおせちをいただく。

テレビはニューイヤー駅伝。お義父さんがいないことを除いて、いつもと同じ正月である。
▼人心地ついて実家の近くの親戚の家に挨拶に向かう。これも毎年の恒例行事だ。春先ににいちゃんが亡くなったので、今年はおじちゃんと二人分の線香だ。それから居間に移ってコーヒーをよばれた。車中、妻も下の子もにいちゃんが亡くなって二回目の正月だと言い張るが、奥さんにきくとやはり昨春のひな祭りだという。昨年の正月は入院していなかったのだそうだ。「そのせいね」と妻はいうが、人の親戚のことなんてその程度の認識だろう。
▼おばちゃんは昨年足に大根を落として腫らしていたが、一年たってもまだよくならないそうだ。年のせいで治りが遅いのかと思ったら、同じ場所に今度は本を落としたらしい。妻にお悔やみの言葉をかけている。間質性肺炎ときいて、うちのおとうさんといっしょだという。「起きたいっていうから看護婦さんに頼んで起こしてもらったらあっという間。あの大きい目でゆーっくり辺りを見てそのまま…忘れられんね。あんたんとこはどうやったんね」しんみりするわけでもない。親戚同士、こうして肉親の最期の話をするのも悪くない。
▼それから初詣に行っていったん妻の実家に戻り、おせちの残りとブリの刺身でビールを飲む。部活が始まる下の子を駅まで送り、夕方から親友とサシの新年会。これも毎年の恒例行事だ。毎年御宅にお邪魔するのは悪いので、焼肉屋からスタートしたのだが、結局うち飲みに移行。大スクリーン映写機でのエキサイトボクシング観戦も恒例。日本酒、ワイン、シングルモルトを五合ずつあけて一泊。いい大人のすることじゃないね。
▼やはり友人宅に泊まった妻が迎えにきて、正月二日は妻とドライブデート。妻がしきりに「焼肉臭い」と文句を言うので、服を買ってその場で着替える。思えばIKEAのフードコートで昼食というのも昨年と同じだ。夕食は牡蠣のクリームパスタ。

▼正月三日の朝はさすがに牡蠣にも雑煮にも飽きて普通の味噌汁にご飯に納豆を食べた。箱根は二年連続で青学が盤石のレース運びである。男手のあるうちにお義母さんの介護ベッドの配置替えをしてお暇する。僕からみると昨年までのお義母さんと変わらないように思えるが、実の娘にしか見せない顔もあるのだろう。妻はしきりにたいへんだとこぼす。介護の困難はメンタルな部分が大きい。肉親と一対一で向き合うことに息が詰まるのだ。
▼帰る前に温泉宿から戻った両親に挨拶にいく。昼食を囲みながらひとしきり話す。僕らに迷惑をかけないよう施設を探しているが、なかなかいいものがないという。おかしいな。上の子からきいてたのと違う。上の子は、すぐにでも帰ってきてほしそうな様子だったと言っていたが。本人を前に本音を言わないところが両親らしい。しかしタガが外れた状態も疲れると妻は言う。親子でも遠慮があるうちが花かもしれない。
▼実家を辞去し、妻に駅まで送ってもらう。駅ビルの本屋で恒例の初買い。尊敬する弁護士で詩人の中村稔氏「私の日韓歴史認識」を今年の初読本と定める。昨年末、最終的かつ不可逆的に懸案の慰安婦問題にケリをつけてやったと、通常国会冒頭からアベちゃんが大見得をきっている。まさに反知性主義の代表のような人物だ。