はるが来た

春分の日も過ぎて、名実ともに春の到来である。桜の開花も例年よりかなり早まりそうだ。だが週末は寒の戻りで寒くなりそう。何事も一筋縄ではいかない。
▼お彼岸の法事を済ませた妻から連絡がある。お義母さんがとてもうれしそうだという。傍にいてあげるのが一番の親孝行だ。こういう時、自分が比較的自由のきく女性でよかったとつくづく思ったらしい。仕事を持っている男の人だとこうはいかない。保育園に落ちて憤る女性もいれば、妻のような女性もいる。人はそれぞれだ。
▼お彼岸ついでに親戚のにいちゃんの一周忌の香典をたのんでおいた。ところがおばちゃんが帰り際にまた上の子の就職祝いをくれたらしい。これじゃあ黒ヤギさん白ヤギさんだ。おかしな話だが、妻の話を聞きながら春を強く感じた。春はまどろっこしい。随分遠回りをしているみたいだ。でも本来人間は効率の悪い生き物だと思う。それでいいのだ!
▼さて、年度末が近づいてくると、いろいろと変化がある。テレビも番組改変期を迎えた。大好きな「あさが来た」がもう少しで終了だと思うと寂しくて仕方がない。主演の波瑠が素晴らしい。香椎由宇山本美月といっしょに出演しているGUのCMは、以前は一番格下だったが、ブレイク後の最新のものは一人だけ動きのある役を与えられている。三人の力関係に変化が生じている。
▼一方でうれしい誤算もある。なんとあの熱烈フォローしていた「地方公務員女子東京出向ブログ」が更新されているではないか!一年近くも動きがなかったので半ば諦めていただけに喜びもヒトシオだ。ブログのキャッチも「これからは○○○や××(僕の地元と同じ!)の紹介を中心に」とリニューアルされていた。楽しみができた。
▼ふむふむブルーボトルコーヒーってやっぱ酸っぱいですよねえ。カラバッジォ展僕も見にいきたい。中断前と同じ喫茶店と美術館巡り。派遣元の自治体に復帰以来初の上京とは考えにくいが、ブログ再開のきっかけはやはり上京だ。更新が滞っていたのは忙しさもあるだろうが、地方というのも大きいのではないか。なんといっても東京は、地方にはない物語の契機になりうる魅力がある。
都落ちした僕が地元に戻って以来初めて東京に遊びに行ったのは、確かもう冬の声をきく頃のことだったと思う。僕は在京の最後の頃に勤めていた出版社(エロ)の経理の女の子と待ち合わせてデートした。まだケータイもなかった頃のことだ。どうやって連絡をとったのだろう。今思い出したが、地元で入った進学塾の社員旅行(バリ)のお土産を渡したかもしれない。
▼二人で都内の居酒屋で飲んで、それから横浜の方に移動した。都心から郊外に向かう電車に揺られながら、彼女は誰に話すともなく自分の話をした。この電車で友だちと高校に通ったこと。髪型はポニーテールだったこと。家族構成は女ばかりの四姉妹で、両親がすごく仲がいいことなど。彼女のことを初めて知るような気がした。
▼港の見える場所で告白し、あっけなくフラれた。彼女とは、もうその出版社を辞めて実家に帰ることが決まってから少し仲良くなって、グループで二、三度飲んだくらいで、つきあっていたわけでもないのに、田舎で一人妄想を膨らませて「結婚してもいい」つもりになってたなんて全くオメデタイ野郎だよ。
▼それからなぜか年下の友人のところに電話して泊めてもらった。横浜から八王子方面に向かうのに、もう一度都心に戻ってえらく時間がかかった。ほとんど最終だったような気がする。もがいてももがいても前に進まない悪夢の中にいるようだった。駅前の居酒屋で少し飲んで、そのまま一睡もせず始発で帰った。
▼ほとんど初冬だったのに、男二人で煮詰まった鍋をつつく季節感は、不思議に花冷えのそれに似ていた。ボクログも恋愛ネタが増えてきたら春がきた証拠だ。