王女と三人の騎士

雨が多い。日曜を除いてずっと降っている。だんだんひどくなってくる。雨漏れが心配だ。
▼下の子が聞き分けがなくて困る。キレやすく、やたらにお金を欲しがる。僕と上の子に交互に甘えてきて、突き放すと一方にすり寄ってもう一方の悪口を言うコウモリのような性格になっている。やはり妻の言う通り、両親がともに何日も家をあけるのは早すぎたか。高2だけどね。
▼今彼は遊戯王カードに夢中だ。メルカリとかいうオークションサイトでカードを売り買いしている。メルカド(メールカードの略)かと思ったらメルカリだった。近いところまでいくが、ちょっとだけまちがえるのが年寄りの特徴らしい。理屈に頼るのも年寄りの特徴。思考にナンセンスを受け入れる柔軟性がない。話がそれた。
▼そのカードの売買が成立して実際に発送する段になった時のことである。下の子は封筒を出した経験がないようで、宛名を書く場所どころか相手と自分が裏表のどちらにくるかもわからない。裏表がわからないのと同じである。きかれるままに「宛名は真ん中、住所は右」と答えたら、住所を右の下の方に書いてあった。右肩といえばよかった。いっしょか。
▼今の会社に入った当初に行かされた管理者養成学校で、2週間近くの合宿中毎日社長に手紙を書く日課があった。「こんなくだらないこと」と思ったが、手紙など書いたことのないスマホ世代には案外意味のあることかもしれない。また、似たような毎日の中で書くネタに困ったが、内容より字の正確さや丁寧さが求められていたのかもしれない。
▼さて、封筒ができあがると今度は発送である。ここでも郵便局で重さを量って切手を買うという基本を知らない。カード一枚二枚の封書ならコンビニで切手買ってポスト入れろと言うと、糊を持っていこうとするので笑ってしまった。机に置いてある封筒を見て上の子が「あいつバッチリ本名書いてるけどメルカリでコードネーム使ってる意味ないやん」と言う。またつい笑ってしまう。ちょっと遅れているのだろうか。
▼今日は日曜出勤の代休。この時期は日曜に出ても代休が取れるからいい。平日の休みはまとめて病院を済ませる。午前中無呼吸、午後から歯医者。水虫の皮膚科は来月に回す。諭吉先生が一人いとも簡単に僕の元から去ってゆく。月イチとはいえ定期的に病院にかかるなんて数年前には考えられなかったことだ。これも年をとったことのひとつの表れだろう。
▼僕に遅れること5日、ようやく妻が戻ってきた。帰るなりうちの中を手早く片づける。万年床をあげ掃除機をかける。洗濯機を回しコインランドリーに向かう。買物に行き下の子の好物の材料を買ってくる。僕が歯医者に行ってる間に下拵えをして、戻ってきた僕と再び買物に出る。この間僕ができることは荷物を持つことぐらいだ。それでも「あなたがいて助かった」と言ってくれる。
▼昨日はママの帰還まであと1日と言うところで下の子が完全に機嫌を損ねてしまい、上の子が寝床にしていた子供部屋を追い出された。しばらく電気をつけたり消したり布団を入れ替えたりとつばぜり合いを演じていたが、僕も途中で寝たのでわからない。朝起きると長男が居間のソファで寝ていたので、最終的には優しいお兄ちゃんが折れてあげたのだろう。
▼朝から小康状態だった天気が予報通り15時から崩れ、夕食の支度にメドをつけた妻は下の子を迎えに出ていった。妻と戻ってきた下の子はつきものが落ちたようにおとなしくなっている。昨日あれだけ自分の部屋で寝ると譲らなかった彼は、お風呂に入りゴハンを食べると何も言わずにいつもの寝室に入っていった。やはり我々バカ三人は妻がいないとどうにもならない。

10日ぶりのウチゴハンは下の子の大好物鶏のさっぱり煮。