負け犬の遠吠え

東北まで梅雨が明けて、いよいよ本格的な夏がやってきた。空気はさらっとしているが一日日光にさらされているとダメージは大きい。まだ猛暑日や熱帯夜地獄が始まったわけではない。この夏の勝負どころは盆休みあたりになりそうだ。
▼夏休みに入ってかなりたつはずなのに下の子が通信簿を見せようとしない。まあ今に始まったことではないが。こっちも特に気にしているわけじゃないので言われなければ忘れているところだが、先日進路相談があって妻がその話をするので「見せろ」と言ったらしぶしぶ持ってきた。案の定半分以下だ。国英数が極端に悪い。いいのは体育だけ。上の子と違ってよく机に向かっているのでやはりこれは生来のものだと思う。
▼進学にしろ就職にしろ、受験しないなら学校の成績が全てだ。普通科でもなく成績も悪ければ受験どころじゃない。ところがこのデキの悪い下の子のことを担任の先生から部活の顧問に至るまでみんなで心配している。まさに全校をあげてなんとかこの子の望みをかなえてやりたいと思っている。進路相談の席で妻が強く感じたのはそのことだという。上の子と真逆だ。
▼世の中はよくしたもので、自分ひとりで生きていける能力を持っている人、周囲に流されないゆるぎない自己を持っている人には誰も手を貸さない。そういう人は最悪の環境下でも平然としている。逆に染まりやすい人、流されやすい人はみんなが守ってくれる、手を差し伸べてくれる、盛り立ててくれるものだ。まあなんとかなるだろう。
▼さて、いよいよ都知事選の投開票日だ。ここ2週間ほとんど全国区並みの過熱ぶりだったので、朝目覚めると反射的に選挙に行かなきゃと思ってしまった。都民じゃないけど。そう、僕は元都民だけどもうとっくに都民じゃない。そして都民だった短い間に選挙に行ったことなんて一度もない。だから選挙に行かない人がいかに意識が低いかよくわかる。
▼僕は東京に都合八年間いてついに風呂つきのアパートに住むことはできなかった。大学に六年籍をおき、彼女にフラれて自棄になって大学をやめエロ本の編集部に転がり込んだ。結局「いつまでそんなことしててもしょうがないだろう」という父に従って地元に戻ったのだが、その頃目をかけてくれていた大編集長(エロ)が、飲む度にこんなことを言っていた。
▼「オレの友人に実家が旅館やってるボンボンがいてさ。今はもう家業継いでるんだけどね。たとえ本人にとってそれが自然なことであったとしても、いったん田舎から東京に出てきてまた地元に戻るってことは、人生の選択なんかじゃなくて自分は負けたんだって自覚しなきゃいけない。だってみんな東京に出てくる時点では一旗上げようと思ってるんだからさ」
▼先日しくじり先生を見ていて、20年以上前のこの編集長の言葉を思い出した。漫才ブームで一世を風靡したB&B島田洋七が、芸能界を諦めて佐賀に帰る相談をした時のビートたけしのセリフである。「田舎に帰るなら友だちやめる。だって東京でバカやってるオイラが田舎でマジメに働くオマエに何話すことがある?」編集長とたけしは同じことを言ってると思う
▼23年前、深い考えもなく地元に帰る道を選んだ僕はUターンしたのではなく都落ちしたのだ。負けたのでないとしても逃げたか諦めたかその辺だ。その自覚もなく匿名ブログで自分に関係ない都知事選についてしたり顔で語るなんて負け犬の遠吠え以外の何物でもない。負け犬はどう生きるか。リスク承知でもう一度何かに噛みつくか、それとも黙るか。黙るしかないね。
▼忙しくなる前の最後の休日。ヨガの妻を待つ間に日曜討論見ながらブログを更新。スマホ購入以来ブログの更新以外にパソコンを開くことはない。利点はキーボードの方が入力しやすいということだけ。情報端末としてはいつでもどこでもスマホの方がずっと便利だ。だがその分この小さなプラスチックの塊がプラスチックの塊にすぎないことを忘れがちになる。
日曜討論は先日の障害者殺傷事件がテーマ。いつも感心するのだが出演者の並びは誰が決めてるんだろう。今回も犯罪を主に個人的要因に帰する論者を向かって右に、社会的要因を探る論者を左に配置していた。当然前者は犯罪者から社会をどう守るかという話になるし、後者は犯罪の背景となる社会に目を向けることになる。
精神科医の片田珠美氏は、池田小と同じ自分の不遇を社会の責任に転嫁するアモク型犯罪と断定していた。番組の最後に障害者団体代表の久保厚子氏が「障害者を持つ家族や施設職員がたいへんという話があるがそんなことはない」と力説していたが、今回に限って言えば森達也氏の「介護現場を知るものの犯行」という事実は強調されるべきではないかも。
▼「異質な他者」という言葉をめぐって片田氏と土井氏の間で被害者と容疑者の取り違えがおきていた。要するに弱者の不満がより弱い者に向かう構図である。凋落する地方都市で主人公がブラジル移民に恨みを募らせ傷害事件に至る映画「サウダージ」そのものだ。たしか主人公の弟は障害者として描かれていたはずだ。事件は社会に余裕がなくなっている証拠だと思う。そのことが今、世界的な規模で進行している。世界一豊かな日本も例外ではない。また吠えちゃった。

金曜はオクラと胡瓜のサラダにポークソテーに冷奴。妻はヨガで不在だが、お中元でもらったプレモルがあるのでひとり晩酌がむしろ楽しい。


土曜の土用の丑の日は回転寿司でうな丼。こういう手もある。これらの写真もリアルタイムでは既にインスタグラムにアップされている。