心の旅

いつまでも暑いが向こう一週間はずっと傘マークだ。秋雨である。こいつがやんだら本格的な秋の訪れだ。結局お彼岸まで暑いんだね。
▼2010年11月から始まった当ブログも足かけ6年。一日200万PVを誇る超人気ブロガー女史の顰に倣い「筆力だけで」読者を獲得すべく誰にも知らせてこなかったが、最近は禁を破り請われるままにアカウントを教えるようにしている。にもかかわらず今年はここまで3万PVに満たない。年平均の4万にも届かないペースだ。
▼新規の読者が増えてもアクセスが減っているということは、これまでの読者が離れているということだ。二年以上前に自由人さんが認知してくれるきっかけになった兵六のマスターやお仲間たちは今ものぞいてくれているだろうか。長く続けていると個人的なネタが枯渇し、つい時事ネタに頼ってしまう。勢い内容が新味に欠け、どうしても更新頻度が落ちてくる。
▼要するにマンネリ気味なのだが、試みに他の人気ブロガーはどうしているか気にしてみた。小学生神隠し事件で炎上したオギママブログや、妻の乳がんを告白したエビゾーブログなど。彼らは人気があるだけでなく超多忙な有名人である。にもかかわらず毎日どころか日に何度も更新しているようだ。果たしてそんなことが可能なのか。
▼けどどうも様子がおかしい。センテンスが短い。ワンフレーズごとに改行した上さらに一行ずつあけている。ブログというよりつぶやきだ。単にアメブロ上でツイートしているにすぎない。これでアクセスが青天井なら楽なものだ。僕も仕事上のメールなら、年配のカウンターパートナーが読みやすいように目いっぱいポイントあげて一行おきに書いてるけどね。
▼昨日は担当事業所内で複数現場がありテンテコマイ。久しぶりにメシを食う間もないほど忙しかった。今日も日曜出勤だったが、アサイチに現場で指示だけして抜け出し映画鑑賞。以前の僕なら間違いなく仕事を優先していただろう。忠誠を誓っても誰も褒めてはくれない。全く半世紀近く棒に振ったようなものだ。人生は短い。したいことをガマンする手はない。
▼二週連続侯孝賢監督の「戀戀風塵」

主人公のアワンとアフンは家が隣同士の幼馴染というより許嫁。アワンはデキがいいが家庭に進学させる余裕はなく台北に出て働きながら夜学に通う。追っかけでアフンも台北で洋裁の仕事につくが、アワンはアフンのことより勉強の方が大事なようだ。
▼「冬冬の夏休み」もそうだったが、僕は侯監督の代表作「非情城市」をいっしょに観に行った彼女にフラれた後、レンタルビデオの侯作品は全て借りて観たはずなのに全く記憶がない。若い二人の実家である台湾の山村の原風景、印象的な鉄道信号が変わるシーン、台北での二人の逢瀬…どこまでいってもこれらの映像を以前に見た気がしない。
▼僕はボンヤリと、この映画を主人公が兵役に行ってる間にヒロインが別の男と結婚してしまう話だと思っていた。実際その通りだったが、ラスト近くに弟からの手紙でその事実を知らされた主人公が、兵舎のベッドを叩いて泣くシーン以外見事に何一つ覚えていなかった。きっとそのシーンだけは感情移入できたのだろう。
▼アワンの兵役が決まった後の二人の受け止め方には違いが伺える。アフンはケガをした共通の友人を見舞うお粥の塩加減を間違えるほどの動揺を見せる。台北駅の見送りも辛くて最後までいられない。一方アワンはバイト先の社長や実家への義理や挨拶を優先させ、アフンを十分ケアしていない。金門島もはじめのうちアフンから一日何通も届く手紙に返事を返していないように見える。どうでもいい遭難者のエピソードを書いてみたり。
▼学校からの帰り道、電車の中で二人で勉強するシーン、後から来るアフンをアワンが台北駅に迎えに行くシーン、映画館の屋根裏で仲間と食事をするシーン、兵役が決まった仲間の送別会のシーン、アワンが仕事中、家族にお土産を買うアフンの買物につきあうシーン、アワンがアフンの洋裁屋を訪ねる格子越しの会話のシーン、熱を出したアワンをアフンが看病するシーン、腕をあげたアフンがアワンのシャツを仕立てるシーン…
▼これらのシーン(映画のほとんど大半なのだが)を僕がすっかり忘れていたように、アワンもまたアフンを失うまで彼女が自分にとってかけがえのない存在であることが見えていなかった。兵役から帰ったアワンに畑仕事をしていた祖父が言う。「苗を植える前に全然雨が降らなかったり、伸びてきたところで台風が蔓を切ってしまったりうまくいかない。サツマイモは薬用人参より難しい」
▼二人の実家のある駅に十份の文字が見える。兵役の前に台北から実家に戻るアワンが乗る列車は基隆行きだ。流れる雲が切れると緑の山肌を移動していく光の帯が見えるほど強烈な陽射し。昨年結婚20周年記念に台湾を訪れたからこそわかることも多い。1990年の春、偶然立ち読みの漫画誌の中に「非情城市」を紹介する谷口ジローのコラムを目にしたところから、侯監督と台湾を巡る僕の旅は始まり今もまだ完全に終わってはいない。願わくば僕の拙いブログも、読者にとってそのような契機でありたい。




月曜はこの夏最後のガパオライス。火曜明太クリームパスタ。水曜鶏と野菜のオーブン焼き。肉がボンレスだと子供たちの食いつきが違う。木、金ヨガで写真なし。土曜はナスとレンコンの肉炒め。そしてデザートは毎日巨峰。