インスタグラム臭

10月になった。相変わらず雨模様で蒸し暑い。今週は木曜まで雨、金曜を挟んで土日も雨の予報。台風18号が暑さも雨もみんなまとめて持ってってくれないだろうか。
▼日曜日。朝目が覚めて休みだと気づいた時の安堵感がハンパない。それだけ気が張ってるということだ。朝が早いのは同じだが、ゆっくり「住人十色」を見る幸せ。今週の住人は北海道の保育園を敷地ごと買い取ってリノベーション(この言葉もなんだかな。リフォームでいいじゃん)した。なんと500㎡で90万!坪六千円である。国が大手デベロッパーに五輪用地として都心の一等地を破格で払い下げるのは頭にくるのに、個人相手にこの程度の物件だと何とも思わない。ホントは規模の問題じゃないんだろうけど。
▼それにしても豊洲はそもそもの初めからおかしいことだらけだ。普通の商取引なら汚染土の処理費用が土地の価格に反映されないはずがない。豊洲40ヘクタールの土地に対して東京ガスに支払われたのは1980億。後から土壌汚染対策費が860億かかるなら、普通はその分を引いて1120億になるはずが、実際は2840億かかったことになる。土地の値段は事実上71万/㎡の坪230万。うちの近所(政令市の山の手)の十倍だ。これが適正かどうか、僕には判断がつかない。
▼他方、盛り土は40万㎡×4.5mの180万㎥。10,000/㎥としても180億。建物の地下を埋め戻さないことで、建坪半分として100億くらいは浮くだろう。これが裏金としてどこぞの誰に流れただのゼネコンが儲けただの言われているが、どこにもいっちゃいない。元々設計数量に入ってないんだから。都の担当者としては節約したつもりなんだろうけど、最初に間違えると取り戻すのは難しい。東京ガス通常の3倍払って、盛り土しないことで3%節約するようなものだからだ。話が逸れた。
▼ご主人は光学系の技術職から脱サラして家具職人になり、保育園のリフォームも自ら手掛けた。最初の会社を辞めてから家具づくりを勉強して製作会社に所属し、マイホームの入手を機に独立した。そこまでに何年もの時間を要しているが、会社勤めの蓄えもあったのだろう。冒険的に見えて、その実かなり計画的な人生だ。逆に好きなように生きるには、用意周到な計画が必要だ。かのフロベールも「独創的な仕事は規則正しい生活から生まれる」と言っている。僕のように行き当たりばったりでは何事もなしえない。もちろん家も建たない。
▼その後はスマホでひたすらインスタグラム。ウマイヘタは抜きにして、写真はその人の趣味嗜好から生き様まで全てが写り込んでしまう。風景や食レポ、セルフポートレートからオモシロ写真といったテーマもそうだし、構図や光の具合もそう。その人に世界がどう見えているか、その人が世界の何を見ているかがほとんどわかってしまう。極端な話、写真のセンスがない人は、美しいものを美しいと感じていないかもしれない。僕も含め、たいていは食べ物の投稿。みんな三度のメシだけが楽しみなのだ。
▼しかし同時に、ただセンスのいいコジャレタ写真を撮ることに何か意味があるのかなとも思う。見る人の世界観を変えるような写真なら別だけど。そんなのはアクセスフリーの公開の場ではめったにお目にかかれない。スマホの機能を使って後から補正されたものなどは論外。ブレイクした芸人ではないが、「ゴッホより普通にラッセンが好き」と告白しているようなものだ。
▼ランダムに眺めるうち、那須の山中で暮らしている人を見つけ、フォローさせていただいた。那須は子供の頃、仲のいい三家族でキャンプに行った想い出の場所だ。僕が住んでいたところもかなりの田舎で、探せばカブトやクワを採るのに苦労はなかったが、那須では道を歩けばそれこそ掃いて捨てるほど転がっていた。一泊する間にミヤマも二匹ほどゲットした。難易度でいえば、うちのカナブンが那須のカブト。コクワがミヤマという感覚か。
▼子供も小さく、まだ若いだろうに立派なものだ。時々東京に出ているようだけど、いったいどんな仕事をしてるんだろう。根が貧乏性なので、まずは経済的なことが気になってしまう。実際は普通にローンを組んでいるだけかもしれない。単にスナックのホステス相手に朝までバカ騒ぎするより、木立の中でモーニングコーヒーをすする方がいいという選択の問題だ。だが写真に全く生活臭がないのはどういうわけだろう。自然に囲まれた理想的なライフスタイルを申し分のないセンスで切り取った写真の、それもまた紛れもない属性のひとつに違いない。







生活臭プンプンの僕の写真。もちろん全部メシの写真。フォロバはまだない。